「法曹無資格者による契約書等審査サービスの提供」が弁護士法違反の可能性があるとのR4.7.8付け法務省回答

 法曹無資格者による契約書等審査サービスの提供につき、令和4年7月8日、法務省は弁護士法第72条本文に違反すると評価される可能性があるとの見解を示しました。

その是非はともかく、正確な議論の前提として法務省の回答をご紹介します。

【事業名】

法曹無資格者による契約書等審査サービスの提供

【申請事業者】

法曹無資格者による契約書等審査サービスの提供を検討する法律事務所

【法務省回答】

新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表

1.確認の求めを行った年月日

令和4年6月8日

2.回答を行った年月日

令和4年7月8日

3.新事業活動に係る事業の概要

⑴ 照会者が新たに設立する株式会社(以下「本件新会社」という。)は、法曹資格を有しない者(以下「法曹無資格者」という。)による契約書のチェックサービス(以下「本サービ ス」という。)を有償で行うことを予定している。

⑵ 本サービスは、①顧客が確認を求める契約書の各契約条項につき、その法的リスクの程度を判定した上で、②契約条項の代替案を提示するものである。

上記①においては、顧客が確認を求める契約書の各契約条項につき、その法的リスクの程 度を「とても不利」・「少し不利」・「どちらともいえない」・「少し有利」・「とても有利」の5段階で判定した上で、当該各契約条項を受け入れた場合に顧客が負う可能性がある不利益等について説明を行う。また、上記②においては、予め用意された1つ又は複数の契約条項を代替案として顧客に提示し、当該代替案が推奨される理由について一般的な説明を行う。

上記①及び②は、いずれも法曹無資格者において対応するものであり、法曹資格者の監督 等は一切予定されていない。

⑶ 本サービスの対象は、秘密保持契約書、業務委託契約書、雇用契約書、就業規則、利用規約、プライバシーポリシー、販売代理店契約、システム開発委託契約、株式譲渡契約及び投 資契約を含む、企業・事業者の通常の業務に伴い締結される契約に係る契約書である。

4.確認の求めの内容

上記①及び②の各行為が、弁護士法第72条本文の適用を受けないものであること。

5.確認の求めに対する回答の内容

⑴ 弁護士法第72条本文は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と規定している。

本件では、上記①及び②の各行為が、同条本文に規定する「その他一般の法律事件」に関 して「鑑定(中略)その他の法律事務」を取り扱うことに当たるかが問題となる。

⑵ 弁護士法第72条本文に規定する「その他一般の法律事件」に該当するというためには、 同条本文に列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に争いがあり、あるいは疑義を有するものであることが要求される。これに該当するかどうかは、顧客と相手方との関係、契約に至る経緯やその背景事情等といった個別具体的事情を踏まえ、個別の事案ごとに判断されるべき事柄であるから、そうした個別具体的事情によて は、本サービスが弁護士法第72条本文に規定する「その他一般の法律事件」に関するもの を取り扱うものと評価される可能性がないとは言えない。

なお、照会書によれば、本サービスにおいては、顧客による自己申告や契約類型、契約書 の内容その他の情報に基づき、契約書のチェックを行う法曹無資格者において、弁護士法第 72条本文に規定する「その他一般の法律事件」に当たり得る事案を本サービスの対象から 除外するとされている。しかし、前記のとおり、弁護士法第72条本文に規定する「その他 一般の法律事件」に該当するか否かは、具体的な契約ごとに千差万別の個別具体的事情を踏 まえ、判断されるべきものであって、法曹無資格者による事案の選別の適正性を完全に担保 することが困難であることに照らすと、法曹無資格者による事案の選別が予定されていることをもって、一概に、本サービスが同条本文に規定する「その他一般の法律事件」を扱うものに当たらないと判断することは困難である。

⑶ 次に、上記①及び②の各行為は、顧客が確認を求める契約書の条項の具体的文言からどのような法律効果が発生するかを判定しこれに基づいてより適切と考えられる代替案を示すものであり、これらは正に法律上の専門的知識に基づいて法律的見解を述べるものに当たり得る。

よって、上記①及び②の各行為は、いずれも弁護士法第72条本文に規定する「鑑定」に 当たると評価される可能性がある。

⑷ 以上によれば、本サービスは、弁護士法第72条本文に違反すると評価される可能性があると考えられる。

 

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